ミクロな目で見た蒸発 のお話
前回の記事は、水をまいて放っておくと、水が蒸発して水蒸気に変わるので見えなくなるというお話でした。今回はこの続きで、水が蒸発するときに周囲から奪う「気化熱」についての記事です。
気化熱を「うばう」とは
暑い日に道路に水をまくと、水が蒸発するときに気化熱を奪って涼しくなる・・・といいますよね。汗が乾くときに寒く感じるのも、汗の水が蒸発するときに体から気化熱を奪うためです。
「熱」というと、「冷たい水が蒸発して熱い水蒸気になるのかな?」と思ってしまいそうですが、少し違います。熱というのはいろいろなことに使えるエネルギーで、水が蒸発する場合には「引っぱりあう分子どうしを引きはなす」ために使われるのです。
エネルギーと言われましても・・・?
といっても・・・「エネルギー」というのが何なのかがこれでは分かりにくいですよね。この記事ではあまり深入りしませんが、「ものを熱くする」「ものを動かす」「くっつこうとしているもの(磁石のNとSなど)を引き離す」など、「放っておいても起こらない」ことを起こす原動力になるのが「エネルギー」です。逆に、「熱いもの」「動いているもの」「くっつく相手から離れているもの」は「エネルギーをたくさん持っている」ことになります。
以上の説明で何となく分かっていただけますかね?よくよく考えると難しい概念なので、まあ少しずつ慣れていただくのがいいと思います。
- 「エネルギー」の使い道
- ものを熱くする
- ものを動かす
- くっつこうとしているものを引き離す
- 「エネルギー」を持っているもの
- 熱いもの
- 動いているもの
- くっつく相手から離れているもの
気化熱の使い道
水も水蒸気も、H2Oという分子(粒のようなもの)でできています。例えば、コップ1杯の水の中にはおよそ10,000,000,000,000,000,000,000,000個もの分子があります。分子は自由に動こうとしているのですが、お互いに引っぱりあっているので、コップに入れた水がばらばらに散らばってしまうことはありません。
ところが、水の分子が周囲から熱(=エネルギー)をもらうと・・・おお、これは上で書いた「くっつこうとしているものを引き離す」に当てはまりませんか?引っぱりあっている水分子どうしを引き離すために、このエネルギーが使われるのです。
こうして、水の分子が周囲から熱を奪うと、互いに引っぱりあう力を振りほどいて、空中に逃げていくことができます。これが「蒸発」です。
水の蒸発というありふれたできごとでも、ミクロな目で見てみると意外とよく分からないことが混じっていて、面白いですね。
出典
この記事はちゅーピー子ども新聞 65号(2012年7月15日発行)7面に掲載した記事を加筆修正したものです。